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暮しの記憶~クラシノキオク~

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2008年 07月 24日

男と女

色川孝子の『宿六・色川武大』を読んだ。

この本が出た頃だろうか・・・かなり前のような気がするが
徹子の部屋に色川孝子さんが出演して、結婚生活のあれこれを話したのを見たことがあった。
そのとき以来ずーっと読みたいと思っていた本。

色川武大が、40歳を過ぎていたとき、孝子さんは20代前半だった。
世間並みの婚約者もいたのに、かなり年上で汚な好きで太っていて禿げていて、
ナルコレプシーという奇病をもっている特別の変わり者のいとこの武ちゃんに惹かれてしまい
2人は一緒に暮らしはじめるようになったのだ。

この男は、あと2、3年で死んでしまうのだろう・・・だからそれまで私がついていてあげよう・・・
という思いと、初めて見た不思議な彼の世界への好奇心から。

結婚してからは、1日6食(しかも半端ではない量)を食べる武ちゃんの食事の世話、
編集者やわけのわからない人が次々と家にやってきて泊まったり飲み食いしていくので
そういう人たちの世話、博打にあけくれる武ちゃんのお金にまつわるあれこれ、
24時間いつかかってくるともしれない電話や何度も繰り返される引越し、
すぐに死んでしまうと思われた武ちゃんが元気になってしまったという思惑違い
などなどで、孝子さんも心身ともに衰弱したりして。

そんな生活に嫌気がさしたある日、孝子さんはマンションを借りて家を出る。
けれど、武ちゃんのことが気になってしまい夜中に洗濯やゴミを出しに帰ったりして。
結局は、また2人で暮らし始めるようになるのだった。

孝子さんと色川武大は、身体的にはあくまでもいとこ同士という関係で
男女の関係ではなかったかのように読み取れる文もある。
でも、武ちゃんが酔っ払って帰ってきて、孝子さんをひざの上に座らせて
2人でじゃれる様が描かれているところでは、とても心に響くものがあった。

最後に武大氏が病院に入院し、夜中に2人で話をする場面では
『二人して少しの間絶句し、涙ぐんでしまったのでした。いとこの武ちゃんではなく、
なんだか一心同体になってしまったようで、まるで夫婦みたい。』
とある。
結局孝子さんは、すぐに死んでしまうと思っていたいとこと二十年間連れ添ったのだ。

男と女の不思議。
もちろん100人いれば100人のありようは違うのだろう。
本が終わりに近づくにつれ、ひとつひとつの話が胸にせまってきた。

愛の形はいろいろ。
男と女

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by anemonexs | 2008-07-24 14:17 | 本・映画・音楽


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